女性ライフステージ外来
女性ライフステージ外来

女性の身体は、ライフステージごとに大きく変化し、それに伴って心身の悩みもさまざまです。思春期は排卵周期が確立する過程にあり、初経から月経不順、月経痛、PMSなどのホルモンバランスの成長に伴う不安が多く見られます。成熟期には妊娠・出産・避妊に関するご相談や、月経痛・子宮筋腫・子宮内膜症といった婦人科疾患のケアが中心となります。更年期には、ホットフラッシュやイライラなど、閉経に伴う症状が現れ、心と身体の両面からのサポートが重要です。老年期には骨粗しょう症や尿もれ、萎縮性膣炎など、加齢に伴う症状への対応が求められます。
女性のライフステージは大きく4つに分けられ、これらの区分は、女性ホルモンのひとつである『卵胞ホルモン(エストロゲン)』の分泌量の変化によって特徴づけられています。エストロゲンは、月経・排卵といった妊娠出産にかかわることだけでなく、骨や血管、皮膚、脳の働きなど、全身の健康にも深く関わっています。
思春期
卵巣の働きが始まり、エストロゲンの分泌が増加します。これにより、初経を迎え、乳房の発達など、身体への変化が現れます。
成熟期
エストロゲンの分泌が最も安定して活発な時期です。妊孕性(妊娠する力)も最も高く、妊娠・出産といった一大イベントを迎える人もいる一方、月経困難症などの月経にまつわる不調も顕著になり、子宮筋腫・卵巣腫瘍が見つかることもあり、注意が必要です。
更年期
卵巣の働きが徐々に低下し、エストロゲンの分泌が不安定になります。これにより、のぼせ・ほてり・不眠・気分の落ち込みなど、いわゆる「更年期症状」が現れやすくなります。
老年期
エストロゲンの分泌がほとんどなくなり、骨粗しょう症や動脈硬化、膣や尿道の萎縮など、加齢とともに起こるさまざまな健康課題が出てきます。

思春期とは「初経(初潮)が始まってから月経が安定するまでの期間(日本産婦人科学会)」のことで、具体的には8~9歳から17~18歳までの時期をいいます。
女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)が少しずつ分泌されるようになり、皮下脂肪でカラダが丸みをおびてきて、胸がふくらんだり、陰毛やわき毛が生えてきたりと大人の女性のカラダに近づいていきます。
初経を迎えるのは10歳~14歳ぐらい(平均12歳6ヶ月)。まだその頃はエストロゲンをつくる卵巣のはたらきが未熟なため、月経周期や期間はまだ不安定で子宮の発育も未熟なことから月経痛(月経困難症)も起きやすいようです。思春期の後半ぐらいになって卵巣や子宮がある程度まで成熟すると、月経周期も安定し、月経痛も軽くなっていきます(ストレスや子宮内膜症などが原因で月経痛が続く場合もあります)。
また、この時期はカラダだけでなく、精神的にも大きく成長していきます。ただ、ココロとカラダの成長の速さが違うことが多いため、心身のバランスが崩れやすく、ココロの問題や病気が生じやすくなります。
月経困難症(生理痛)
強い腹痛や腰痛、吐き気、頭痛などが月経とともに現れ、日常生活に支障をきたす状態です。思春期では、子宮の発達が未熟なこともあり、痛みを感じやすい傾向があります。
月経不順
初潮を迎えてからしばらくはホルモンのバランスが不安定なため、月経の周期が確立していません。ただし、3か月以上月経が来ない「無月経」や、月に2回以上の「頻発月経」が続く場合は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)などのホルモン異常や他の疾患が隠れている可能性もあります。
月経前症候群(PMS)
月経の前に、イライラ・落ち込み・腹痛・頭痛・眠気などの症状が強く現れる状態です。学校生活や対人関係にも影響を及ぼすことがあり、思春期のメンタルケアにもつながります。
外陰炎・膣炎
清潔にしていても、ホルモンの変化や免疫力の低下、通気性の悪い衣類などの影響で、外陰部や膣に炎症を起こすことがあります。かゆみやおりものの増加、痛みを伴う場合は、早めの治療が必要になります。
月経痛・PMSともに「がまんする意味」はありません。思春期、学生は大人が思う以上に忙しく、「学校でナプキンを変える」ことなど、大人が思うより負担になることもあります。学生生活の妨げにならないよう、適切に介入していくことが大切だと考えております。「部活の大会に生理が重ならないようにしたい」など、お気軽に相談ください。
*内診も「必須」ではありません。心身の負担にならないよう細心を払います

18~19歳から44~45歳くらいまでの時期が成熟期です。
女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が順調になり月経周期が安定し、心身ともに安定する時期といえるでしょう。体つきが女性らしくなるだけでなく、結婚や妊娠、出産育児や、仕事や趣味などにも積極的に関わっていける、人生のなかでいちばん充実した時期かもしれません。
とくに成熟期の前半はカラダが妊娠や出産にもっとも適した状態になりますし、体力もあるので、パワフルに人生を楽しむことができます。ただし、この時期に自分を過信してモデルのような体型を目指して無茶なダイエットをしたり、仕事も家庭も完璧にこなそうとしてがんばりすぎたりして、ココロやカラダに負担がかかる状態が続くと、ホルモンバランスが崩れ、年齢を重ねたときに体調不良の原因になることもあるので、気をつけましょう。
子宮顎がんは20歳から検診が必要です。また胸にしこりや違和感があったら乳がんの検診を受けておくようにしましょう。一方、成熟期の後半は責任のある仕事を任されたり、仕事と子育ての両立をしていたり、何かと慌ただしい時期です。ただ充実した生活とはうらはらに卵巣機能は少しずつ衰えてきて、エストロゲンの分泌が低下していきます。それとともに乳がん、子宮がん、子宮筋腫や、肥満や糖尿病などの生活習慣病にもかかりやすくなります。この時期になったら定期的に健康診断を受けることが大切です。
外見上の変化としては少しずつシワ・シミ・白髪などが出てきます。
月経困難症(生理痛)
月経に伴う強い腹痛や頭痛、吐き気などの症状は、月経困難症の一症状です。月経痛がひどくなると、日常生活に支障をきたすことがあります。原因としては、子宮内膜症や子宮筋腫などが考えられます。
子宮筋腫
子宮筋腫は良性の腫瘍で、30代以上の女性の1/3に見られるともいわれています。月経過多や腹部の違和感、不妊症などを引き起こすことがあり、大きくなることで痛みや圧迫感を感じることもあります。場所や大きさ、ライフスタイルで治療方針が大きく異なります。
子宮内膜症
本来子宮内腔にある内膜が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所に発生する病気です。月経痛がひどくなるほか、不妊の原因となることがあります。
不妊症
成熟期において、不妊症の悩みも増えます。年齢と共に卵巣の機能が低下し、妊娠が難しくなることがあります。また、排卵障害や子宮・卵巣の異常が不妊の原因となることもあります。
※当院では女性の不妊スクリーニング検査(血液検査、超音波検査、卵管通水検査)および排卵タイミング指導のみ対応しております。専門施設での治療をお勧めすることもあります。
特に35歳以上の方は申し訳ありませんが早々の専門施設受診をお勧めいたします。
子宮がんや乳がんのリスク
30代後半から40代では、子宮頸がんや乳がんのリスクも高くなります。定期的ながん検診は、早期発見のために不可欠です。

閉経が起こる前後の5年間、年齢的には45歳ぐらいから55歳ぐらいまでを更年期と呼んでいます(日本産婦人科学会)。ただ、個人差がとても大きく30代後半から始まる人、50歳を過ぎてから始まる人など、さまざまです。卵巣のはたらきは成熟期の終わりぐらいから少しずつ落ちてきますが、更年期になる40代半ばあたりから機能低下がはっきりしてきます。
その結果、女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が減ってきて、やがて分泌されなくなります。こうしたカラダの変化がホットフラッシュ(のぼせ)・ほてり・発汗・イライラ、うつ症状といった更年期の症状(更年期障害)を引き起こしていると考えられています。
症状も人によって重い人も軽い人もいます。
「更年期をあまり気にせず、前向きに過ごす」ことが更年期を楽に過ごすポイントのようです。また、エストロゲンは妊娠や出産、女性らしいカラダをつくるといったはたらきのほかに骨密度を維持する、コレステロールを下げるなどたくさんのはたらきを持っています。そのため、エストロゲンの分泌がなくなると、骨粗しょう症や高血圧、肥満、がんなどの病気にかかりやすくなるので、健康診断は欠かさず受けた方がいいでしょう。
また成熟期の後半から始まった加齢による変化も、皮膚がたるんでシワが深くなる、シミや口元の毛などが濃くなるなど、さらに進んでいきます。
更年期障害
更年期障害は、40代後半から50代にかけての閉経をはさむ時期に、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少により起こる心身の不調です。主な症状には、のぼせ・ほてり・大量の発汗・動悸・不眠・イライラ・不安・気分の落ち込み・肩こり・疲れやすさなどがあります。症状の現れ方には個人差があり、生活に支障をきたすこともありますが、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬、カウンセリング、生活習慣の見直しなどで症状を和らげることが可能です。
骨粗しょう症
更年期後、エストロゲンの減少により骨の密度が低下し、骨がもろく折れやすくなる病気です。特に女性は、更年期以降に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することで、骨密度が急速に減りやすくなります。背中や腰の痛み、身長の縮み、骨折しやすくなるといった症状が現れることもあります。
*当院では骨塩測定は行っておりません
子宮筋腫や子宮内膜症
女性ホルモンの影響を受けるため、40代から症状(過多月経・月経痛)が顕著になることがあります。特に、月経過多、不正出血、強い生理痛や骨盤の痛みがみられることがあります。放置すると貧血や生活への支障につながることもあります。
膀胱炎や尿失禁
更年期以降は女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、膀胱や尿道の粘膜が弱くなり、頻尿や尿漏れ、膀胱炎を起こしやすくなります。膀胱炎は排尿時の痛みや残尿感があり、尿失禁はくしゃみや笑った時などに尿が漏れることがあります。これらは年齢による自然な変化のひとつですが、治療や生活習慣の工夫で改善が可能です

更年期が過ぎた50代半ば以降を老年期といいます。
老年期を迎えると、女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌がなくなり、男性との差はほとんどなくなります。そのため、それまで男性に多かった生活習慣病(高血圧・高脂血症・糖尿病など)、がん、認知症、骨粗しょう症などの病気にもかかりやすくなります。骨粗しょう症や認知症では、骨折などによって寝たきりにつながりやすいことから深刻です。
とくに認知症の場合、本人が病気に気づきにくいことから、家族や周りの注意が必要になってきます。
このほか視力や聴力、筋力が低下してきたり、物覚えが悪くなったりしますし、シミやしわ、白髪が増え、髪の毛の量が減るなど、外見上も変わってきます。
このように一見、あまりよいイメージをもたない老年期ですが、想像力や判断力、経験を元にした能力は、若い人より老年期の人の方が豊富。最近では若いころにはできなかった夢を叶えたり、新しい趣味を始めたり、新しい地に移住して生活を始めたりするなど、老年期を第2の人生として、前向きに過ごしている人たちも増えています。
子宮脱・膀胱瘤(骨盤臓器脱)
加齢や出産の影響で骨盤底の筋肉や靱帯がゆるみ、子宮や膀胱、直腸などが腟の方へ下がってくる状態です。「股のあたりに違和感がある」「何かが下がっている感じがする」「排尿や排便がしにくい」といった症状が見られます。進行すると日常生活に支障をきたすこともあり、治療には骨盤底筋体操やペッサリー、手術療法が用いられます。
萎縮性膣炎・外陰炎
エストロゲンの分泌低下により、膣や外陰部の粘膜が薄く乾燥し、かゆみや痛み、性交痛、出血を引き起こすことがあります。治療には、局所ホルモン療法や保湿剤の使用が効果的です。
頻尿・尿漏れ(過活動膀胱・尿失禁)
膀胱の筋肉や神経の変化、骨盤底のゆるみなどにより、尿意を我慢しにくくなったり、くしゃみや運動時に尿が漏れることがあります。治療は、薬物療法、骨盤底筋トレーニング、生活習慣の見直しなどを組み合わせて行います。
当院では、女性がどのライフステージにおいても安心して健やかに過ごせるよう、「フェムケア(Femcare)」に力を入れています。フェムケアとは、病気の治療だけでなく、心と体の両面から女性の健康をサポートする総合的なケアのことを指します。思春期から妊娠・出産期、更年期、そしてシニア期まで、女性の体はホルモンの変化に伴って大きく移り変わります。その時々で起こる体調の揺らぎやお悩みに寄り添い、快適な毎日をお手伝いするのが私たちの役割です。
フェムケアの内容は幅広く、子宮頸がんや乳がん検診などの予防医療から、月経不順やPMS、妊活や産後ケア、更年期の不調のサポートまで多岐にわたります。さらに、膣や外陰部の乾燥・かゆみなどデリケートゾーンのケア、尿もれ予防、美容やスキンケアのご相談にも対応しています。心のケアも大切にしており、不安やストレスを抱えた際には、安心してご相談いただけるよう環境を整えています。
病気になってからの治療ではなく、日頃から体を整え、病気を未然に防ぐことを大切にしています。
思春期、妊娠・出産、更年期、シニア期と、女性の体の変化に応じたオーダーメイドのケアを行います。
身体の症状だけでなく、心の不安やストレスも含めて総合的にサポートします。
デリケートゾーンのお悩みや「誰に相談してよいかわからない」不調にも、安心してご相談いただけます。
健康だけでなく、美容や快適さも含めて「自分らしく生きること」を応援します。
当院のフェムケアは、病気の治療を超えた「新しいかたちの女性医療」です。「なんとなく調子が悪い」「小さな不調が気になる」といった段階から、どうぞお気軽にご相談ください。すべての女性が自分らしく輝けるよう、心を込めてサポートいたします。
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